【代表松田のつぶやき】今話題の「洋上風力発電」とは?~エコキュート普及の足がかりとなるか!?~

深刻化する地球温暖化の影響を受けて再生可能エネルギーの普及が進むなか、火力発電に変わる主力電源として現在「洋上風力発電」への関心が高まっています。そこで今回は、島国である日本にとって大きな可能性を秘めた「洋上風力」についてお話ししたいと思います。じつは、エコキュート普及の足がかりとしての期待も大きいのです。

目次

洋上風力とは?

まず「洋上風力発電」とは一体どのようなものなのか、その仕組みやメリットからお話します。洋上風力発電は「風力発電」の一種で、読んで字の如く海洋上に風力発電設備を作り、海の上に設置された風車を回転させることによって発電させるものを指します。

風の力を利用した風力発電は、太陽光と違って昼夜問わず24時間発電できるのがメリットです。とはいえ、陸上ではブレード(回転羽根)を回せるだけの風を確保できる場所が限定されてしまうことや騒音被害が懸念点でした。そこで注目されるようになったのが、海洋上に風力発電設備を作る「洋上風力発電」です。

海に囲まれた島国・日本にとってそのポテンシャルは非常に高く、長い海岸線や広域な海域を利用した洋上風力発電が有望視されています。さらに、東日本大震災以降「原子力発電」の稼働が見込めない日本にとって24時間利用可能な再生可能エネルギーの需要は高く、火力発電に変わる主力電源としての役割が期待されています

洋上風力発電のメリット&デメリット

そんな風力発電を海洋上で行う「洋上風力発電」のメリットは、大きく次の3つです。

1. 陸上に比べて大きな風力を持続的に得られること

2. 土地や道路の制約がなく、比較的容易に大型風車を導入できること

3. 景観や騒音などといったトラブルへの懸念が少ないこと

陸上風力発電と比べて効率的に発電できるので、安定した電力供給が可能になるというのが最大の魅力です

一方デメリットとして挙げられるのがコスト面です。陸上風力発電と比較すると、洋上風車の建設費や維持管理費、洋上変電設備、海底ケーブルなどコストが多くかかります。また、洋上風力発電が先進している欧州と日本の気象・海象条件が異なるため、欧州の事例をそのまま適用することはできません。太平洋側と日本海側で異なる自然条件や洋上風特性を明らかにして日本に適した洋上風力発電の技術を確立するなど、実用化に向けた課題は少なくありません

洋上風力発電の種類と仕組み

実際に風力を利用してどのように発電するのか、ここではその仕組みについてお話します。

洋上風力発電についてお話する前に、まずは「風力発電」の仕組みを確認しておきましょう。風力発電は簡単に言えば、風の力を利用して風車を回し、その回転エネルギーを電気エネルギーに変える仕組みです

風車の羽(ブレード)が風を受けて回転することで交流の電気を発生。風車の裏にはナセルと呼ばれる収納スペースがあり、増速機というギアのような機械が設置されています。これが回転エネルギーを増幅させることで、効率の良い発電を可能に。さらにナセルには風向計や風速計も付いており、風車の方向が常に風上を向くように回転する仕組みになっています。

風力発電の仕組みがわかったところで、洋上風力発電の種類を見ていきましょう。

洋上風力発電は、大きく2つの種類に分けられます。

・着床式洋上風力発電

風車の基礎を海底に固定して設置する方法。水深50m以内の海域に適していると言われており、遠浅の地形が続く北海などヨーロッパの海で導入が進んでいる方法です。

・浮体式洋上風力発電

風車の基礎を海底に固定せず、風車を浮かべる形で設置する方法。水深60m以上の海域で用いられます。現在の主流は着床式ですが、日本は欧州に比べて遠浅の海が少ないため浮体式の実用化が期待されています。国内ではこれまでに長崎県沖や福島県沖で、浮体式の実証研究が進められてきました。

洋上風力発電先進国の導入事例と日本の可能性

洋上風力の導入を牽引してきたのは欧州諸国。なかでも2021年に国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の開催国となったイギリスの導入実績は世界一を誇ります。

世界風力会議(Global Wind Energy Council, GWEC)によると、世界の累積導入量の約59%がイギリスとドイツだけで占められています(2019年時点)。

イギリスで洋上風力発電が推進された要因としては、島国であること以外に、海岸線が長く浅い海域が広がっている地形で風車を設置しやすいことや、北海や大西洋に囲まれて偏西風による安定した風量を得られることが挙げられます。また特徴的なのが、洋上風力発電事業の一部に王室が関わっているということ。イギリス王室事業の一つであることからも、英国では国全体で洋上風力発電が推進されたのだと考えられます。

イギリスでは洋上風力発電拡大のための政策整備が、2000年初頭から行われてきました。そして、「ラウンド1~3」の3段階に分かれて開発が進められています

「ラウンド1」では、海岸線に近く水深が浅い海域を開発。さらに2003年から計画された「ラウンド2」では、さらに海域も広がりました。そして現在開発中の「ラウンド3」では、海岸線から離れてより水深が深い場所の開発が進められています。その一つが、世界最大規模の洋上風力発電所「ロンドン・アレイ」。海上には175基もの発電機が設置され、約50万世帯分の電力がまかなわれているそうです。

そのイギリスと同様に島国で、海岸線が長く経済水域が広い日本では、再生可能エネルギーの主力電源として洋上風力発電の期待が高まっています。日本風力発電協会(Japan Wind Power Association)によると、今後10年間で産業基盤を形成し、2030年以降早期に国際競争力を持つ国内産業を育成することを目標としています

これに伴い、世界で洋上風力発電事業を牽引する事業者が日本市場に参入するなど、国内外の事業者の関心も急上昇。日本の大手電力会社は、国内外を問わず洋上風力への参画を相次いで発表しています

日本の沿岸は、沿岸域からすぐに水深が深くなる地域が多く、浮遊体式洋上風力の活用が期待されています。そのポテンシャルは約473GW(年間1315TWh)で、着床式の対象となる海域の約2倍にあたります(※環境省「洋上発電の導入ポテンシャル集計結果」データを基に事業性を考慮して自然エネルギー財団で推計)。一方で、これまで日本における浮体式洋上風力は実証事業が中心のため課題も多く残っています

エコキュート普及の足がかりとなる可能性大!

再生可能エネルギーの主力電源としても期待される洋上風力発電ですが、じつは当社が販売する「エコキュート」普及への足がかりとなる大きな可能性を秘めています。その理由は、エコキュートが稼働する時間帯に関係しています。

エコキュートは料金が割安に設定された深夜電力を使ってお湯を沸かします。では、そもそもなぜ深夜の電気料金は安いのでしょうか? この答えは非常に単純で、人が寝静まり電気の使用量が減る夜間には電気が余ってしまうためです

多くの発電設備では、発電する電気の量を細かく調整することができません。そのため夜に電気が余ります。この余った電力をムダにしないように、電気会社が考案したのが深夜電力プラン。価格を抑えて夜の電気使用を促進することで、夜間の電力を有効活用しているのです。

そしてこの深夜電力プランに最も寄与していたのが「原子力発電」です。原子力発電は燃料となるウランが核分裂を起こす際に発生する熱エネルギーを利用した発電方法。核分裂は途中で止めることができないため、24時間安定した電力供給が可能になります。しかし日本では東日本大震災による原発事故のあと、原子力発電所が稼動していません。そのため現在では、もともと余っていたはずの深夜電力さえ不足する心配が出てきています。その懸念を解消するポテンシャルを秘めているのが、まさにこの「洋上風力発電」なのです。

風量や台風などの影響を受ける可能性はあるものの、太陽光などと違って24時間電源であることが大きなポイントです。今後、洋上風力発電が広がり深夜電力に余力ができれば、それを活用するエコキュートの普及にも繋がるでしょう。そしてエコキュートの普及により、地球温暖化など環境問題解決に少しでも貢献できればうれしい限りです。

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