人気沸騰中の「節湯水栓」とは?その驚きの省エネ能力を徹底調査!
エコキュートはそれだけでも既に高い省エネ性を持ち、家庭に導入すれば給湯エネルギーの消費量を大幅に削減してくれますが、実はその省エネ性をさらに引き上げてくれる存在があります。
それは、「節湯水栓」と呼ばれる省エネ型の混合水栓です。
従来の水栓では、多くの場合レバーを左に回せばお湯、右に回せば水が出るものの、真ん中の位置で開栓すると水とお湯の混ざった中間水が出てくることがしばしばありました。
これは、たとえ使用者が水を使っているつもりでも、給湯器が起動し少なからず温まった水が流れ出てしまっているということです。
このような無駄を削減するべく、2009年頃から水回り設備メーカーにより徐々に開発され始めたのが節湯水栓です。
節湯水栓は通常の水栓と比較した際、給湯エネルギー消費量は最高でなんと50%近く削減できるケースもあり、近年ではZEHの設計などにおける省エネを図る上で有効な一手となる可能性もあると考えられています。
そこで今回は、大きな省エネ効果を生むとして今注目されている、節湯水栓の性能について迫っていきたいと思います。
節湯水栓とは
節湯水栓の性能を知る前に、まずは水栓の種類を知っておきましょう。
一般的に住宅のキッチンや洗面所、お風呂で使わる水栓には「混合水栓」と呼ばれるものが使われており、お湯と水を混ぜて適温の水を流出するつくりになっています。
混合水栓には基本的に、「シングル」「ミキシング」「サーモスタット」と3つのタイプがあります。
「シングル」は一つのレバーで温度と水量の調節を行うものでキッチン水栓によく用いられ、「ミキシング」は水用とお湯用それぞれのハンドルで水量を調節しながら適温にしていくタイプで、主に湯船用に使われています。
そして「サーモスタット」はダイヤルで好みの温度に設定し、流水用レバーで水圧を調節する仕組みとなっています。
このサーモスタットは、主に浴室のシャワー水栓に用いられます。
これら湯水混合水栓のうち、ある3つの条件中1つ以上満たしたものが節湯水栓と呼ばれます。
その条件とは、以下になります。
➀センサーもしくはボタン付きの「手元止水機構」構造であること
②流水量を削減する「小流量吐水機構」構造であること
③中間水の流水を防ぐ「水優先吐水機構」構造であること
(それぞれの詳しい仕組みについては後述)
これらの条件を基に、2009年には一般社団法人の日本バルブ工業会が独自基準を定め、2013年には建築物省エネ法でも基準値が定められました。
工業会の基準をクリアした場合は「節湯A/B」マークを、建築物省エネ法の基準をクリアした場合は「節湯A1/B1/C1」マークを性能表示することができます。
性能表示マークごとの細かな基準は、以下のようになっています。
<建築物省エネ法における節湯基準>
・節湯A1…「手元止水機構」の構造を有し、給湯エネルギーを従来比でキッチン水栓の場合9%、
シャワー水栓の場合20%削減できる製品
・節湯B1…「小流量吐水機構」の構造を有し、給湯エネルギーを従来比で15%削減できる製品(主にシャワー水栓)
・節湯C1…「水優先吐水機構」の構造を有し、給湯エネルギーを従来比で30%削減できる製品(主にキッチン・洗面水栓)
<日本バルブ工業会が定めた独自の節湯基準>
・節湯A…「手元止水機構」の構造を有し、お湯の使用量を従来比でキッチン水栓の場合9%、
シャワー水栓の場合20%削減できる製品
・節湯B…「小流量吐水機構」の構造を有し、お湯の使用量を従来比でキッチン水栓の場合17%、
シャワー水栓の場合15%削減できる製品
これらの基準は組み合わせることによってさらなる節湯効果を生むことができますが、その点については後ほど詳しく解説していきます。
次は、節湯水栓の条件となる3つの仕組みについてより詳しく掘り下げてみましょう。
節湯水栓の条件となる「3つの仕組み」
手元止水機構
「手元止水機構」は備え付けのレバーを操作せず都度水の出し止めができるよう工夫されている仕組みを指します。
ノズルにセンサーもしくはボタンを設置することによって開栓と閉栓が簡単になり、洗い物や歯磨き中の無駄な流水を軽減することができます。
小流量吐水機構
次に「小流量止水機構」とは、水圧を変えずに流水量を削減できる仕組みのことです。
主にシャワーヘッドに使用される技術で、穴の径や数を調節することで実現しています。
この機構に関してはメーカーそれぞれが独自の技術を持っていますが、大きく分けると
「水に空気を含める方法」と「空気を含めない方法」の2つとなっています。
前者は主にTOTOの技術となっており、水粒の内側に空気を含ませ粒を大きくすることによって「浴び心地の良さ」と「約35%の節水」の両立を実現しています。
後者の方法はLIXILやKVKなどのメーカーが取り入れており、LIXILではシャワーの穴を高速で半分ずつ遮ることで水の出口を半減して水圧を上げる「間引きタイプ」、KVKでは流水穴の数を減らして流水時渦を発生させ、流水径をらせん状に拡大させる「渦タイプ」技術が開発されています。
水優先吐水機構
最後に「水優先止水機構」とは、水とお湯が混ざった中間水の無駄な流出を軽減する仕組みのことです。
従来のシングルレバータイプでは、水のみを流水する領域は右側に10度程度となっており、その領域から少しでも外れるとすぐに湯と混合するようになっていました。
それに対し、水優先止水機構が組み込まれた水栓は水の領域を拡大し、さらに水と湯が混ざる領域に入る前にクリック音で知らせる機能も付いているため、無意識による給湯器の着火および中間水の流水を防ぐことができます。
3つの仕組みを組み合わせればさらに節約効果アップ!
前述したように、ここまで紹介した3つの仕組みのうちどれか一つでも満たしていれば、その水栓は節湯水栓と呼ぶことができます。
しかし、3つの仕組みのうち1つだけではなく全ての仕組みを組み合わせれば、さらなる節湯および節約効果を期待することができます。
そのような水栓には「節湯A1、C1、AB」というマークが表示されており、もしこの水栓を導入した場合は、給湯エネルギーを約50%、湯量を約30%も削減することが可能となります。
そして、節湯水栓の導入はエネルギーだけでなく、CO2や水道代、ガス代などの削減にも繋がります。
日本バルブ工業会によると、「節湯A1、C1、AB」をクリアしているキッチンの場合、年間で水道光熱費を約17,000円~20,000円、CO2を約150kg削減することができるそうです。
また浴室シャワーの場合、「節湯A1、B1」または「節湯AB」をクリアしていれば、流水量は年間で約300㎏、水道代は約30,000円削減することができます。
ZEH住宅への導入やエコキュートとの併用でさらに大きな省エネ効果も
冒頭でも述べた通り、節湯水栓はエコキュートをはじめとした他の省エネ設備と組み合わせることで、さらなる省エネ効果を生み出します。
また、近年では「省エネ・創エネ」を掲げた新しい高性能住宅「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス」に節湯水栓導入を促す動きも進んでいます。
ZEHを設計する上で他の設備部分のエネルギー消費の削減が難しくなった場合は、水栓周りを節湯仕様にするだけで、大きく省エネ性を向上させることが期待できます。
まとめ
今回は節湯水栓について解説していきましたが、「省エネや節約のカギが水栓にあったとは盲点だった…!」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
近年ではTOTOやLIXILをはじめとした様々な水栓メーカーが多様な節湯水栓を販売しているため、少しでも気になった方は、この機会に一度ご自宅の水栓を見直してみてはいかがでしょうか?
もしかすると最新の節湯水栓に変えるだけで、驚くほどのエネルギー消費量削減につながるかもしれませんよ。
今後も当コラムではエコキュートに関する話題はもちろん、「お得で快適な省エネライフ」の実現に役立つ様々な情報を皆さんにシェアしていきたいと思います!